前々回の記事で、10年間の引きこもり生活から脱出するに至った経緯について書きましたが、今回は、社会復帰を目指しサポステに通っていた時のことを書きます。
どうか最後までお付き合いください。
社会復帰したいという意思はあるものの、恐怖で最初の一歩が踏み出せずにいた26歳の私。
ある日、通っている精神科の先生からサポステの存在を教えてもらいました。
サポステというのはニートや引きこもりの支援機関です。
そういう団体や組織があるというのは、私もテレビなどで知っていました。
先生が、「こういう場所があるみたいだよ」と、サポステのことを教えてくれたものの、すぐに
「よし、そこに行ってみよう」とはならなかったです。
なぜかというと、引きこもりを支援する機関や組織というものについて、私はあまりいい印象をもっていませんでした。
昔、部屋に引きこもっている人を力ずくで無理やり外に連れ出している団体の活動を、テレビのドキュメンタリーで見たことがあります。最近は全然見ませんが、昔はよくニュース番組などでもよく取りあげられていましたよね。
私はあれを見て、強い恐怖を感じると同時に、激しい怒りを覚えました。
私が思うに、引きこもっている人たちは好きで引きこもっているわけじゃない。
みんな本心では「働きたい」、あるいは「このままじゃいけない」と思っていて、現状を変えたいという気持ちはあるものの、どうすればいいかわからないと悩んでいる。
学生時代に受けたいじめだったり、受験や就職活動での挫折が原因で、みんな強烈なトラウマや複雑な心の問題を抱えていて、辛い現実から逃避するように引きこもるようになってしまったんじゃないか?
そんなひとりで苦しんでいる人たちの心に寄りそうこともせず、悩みを聞こうともせず、暴言を浴びせて、強引に部屋から連れ出す無理解、無神経さ。
こんなことが許されていいのか?
それで問題が解決したと言えるのか?
と、当時の私は思いました。
『ニートや引きこもりを支援する機関』
と聞いて、私はあのドキュメンタリーに登場した連中の姿が頭に浮かびました。
「もしかしてサポステって、ああいう不愉快な人間の集まりなのか?」という疑念が湧いてきます(実際、行ってみてそんなことはありませんでしたが)。
この疑念のせいで、サポステへ出向くまでには時間を要しました。
しかし、悩んでいる間も時間は過ぎて行きます。
がんで入院していた父ですが、手術は無事成功し退院しました。
そして、しばらく家で休養したのち再び仕事に出掛けるようになり、私はそんな父の姿を見て後ろめたさを感じました。
色々あって父のことは大嫌いなのですが、この時は申し訳なさで胸が潰れそうになりました。
「俺は健康なのに、何やってるんだ?」
ある日の午後、私は唐突にサポステを訪問しました。
サポステに行こうと決意して外出したわけじゃなくて、ふらっと外に出て、なんか気が付いたらサポステに向かっていたというような感じです。
サポステではまず最初に面談を受けるのですが、その面談は予約制なので本当は行く前に予約の電話を掛けなければいけなかったらしく、それを知らなかった私は恥ずかしい思いをしました。ですが、応対してくれたスタッフの方がサポステについて丁寧に教えてくれて、面談の予約も入れてくれました。
その日はそれで帰宅。
後日、再び訪問しました。
面談で、どのような経緯で今日ここに来たか、そしてこれまで自分がどういう人生を送ってきたかを説明しました。
10年間引きこもっていたこと、社会復帰したいが最初の一歩が踏み出せないこと(応募の電話が掛けれない・面接が怖い・等々)を相談しました。
めちゃくちゃ緊張しましたし、恥ずかしかったです。
初めて会う人に自分の悩みを打ち明けるって、なかなか勇気が要りませんか?
10年も引きこもっていたなんて、できることなら誰にも知られたくないわけで……。
私は子供の頃から極度に人見知りする性格なので、会話そのものに苦手意識をもっています。しかも内容が内容なので、この時はたどたどしい口調になってしまいました。恥ずかしくって赤面しながら相談したのを覚えています。
そして、勧められるままに就活講座やコミュニケーション講座などのプログラムを利用するようになりました。
面談で私が「電話の掛け方がわからない」と伝えると、スタッフの方が電話の掛け方を教えてくれましたし、「面接が怖い」と伝えると、一対一で面接の練習にも付き合っていただきました。
これにはとても感謝しています。実際、ここでの経験が後に役に立ちました。
それで、そのままスムーズにいい流れに乗って社会復帰できたのかというと、じつは違います。
あることがきっかけでサポステに通うのを辞めてしまいました。
それについては次回書きます。